そう言う事なんだよ。
いや、この楽譜、
Pe'zの『FREE BIRD』と言う曲の、1分あたりから始まるサビの部分なんだけれど、
ハルさんがそこのコード進行が好きだとTwitterで呟いてたのね。
そして同時に、じゃあなぜこのコード進行が好きなのか、どんなコード進行だから好きだと感じているのか。そこを知りたいと言う話なので、この曲の場合だと恐らく、きっと、
G7だと思うのよ。
このサビの性格を根幹から決定づけてるの、コイツだもん。いや、私もこう言う進行が好きだからこそそう思い込んでるだけかもしらんけど。
どう言う進行かって?
まず、ドミナントコードと言う言葉が音楽用語にはある。
一番解りやすい例で言えば、「起立・礼・着席」のジングル。じゃーん、じゃーん、じゃーんってやつね。違う、三国志の銅鑼じゃなくて、ピアノで弾く号令の音。
あれはコードで言うとC→G7→Cなんだけど、この2つ目のG7がドミナントコード(日本語にすると属和音)で、細かく説明するとややこしいので、
「完全4度上(半音5個ぶん上)の和音に行きたがっている和音」だと思っていれば大丈夫です。
じゃあその「行きたがっている」とはどういう事かと言うと、ちょっと想像して欲しいのが、仮にC→G7と弾いて、そこで音を止めてしまった場合ね。
じゃーん、じゃーん。……ものすごくモヤッとすると思うのよ。
礼して戻らないのかとかそう言うビジュアル的なことではなく、音の流れとして。
これも、最後の和音であるCをじゃーんと弾けばスッキリするわけで、それだけドミナントコードG7にはC(トニックコード、主和音)に行きたいパワーがあるから、と言う事なわけね。
ん、よく解らないだろうか。
じゃあ漫画に例えよう。
仮に、恥ずかしがり屋の女の子が、幼馴染の男の子とこんな会話をしていたとする。
「アンタまたお昼ごはんカップラーメン?」
「お前には関係ないじゃないか」
「何よ、体壊して今度の大会出られなくなっても知らないわよ!」
「そんな事言ってもおふくろは忙しいし、俺は料理なんてからきしダメだしなあ」
「へ、へえ……あ、あのさ、アンタって嫌いな食べ物とかあるの?」こんな、ね。
そうしたら
絶対この娘、お弁当作ってくるじゃん。もうこんな場面が出た時点で読者側には、
次の日――
「お、お弁当作ってきたから食べなさいよ!」
「ええ、お前が?」
「何よ、文句あったら食べなくていいわよ」
「そんなァ、俺お腹ペコペコなんだよ。うわぁ……本当にお前が作ったのかよ、すげえ美味そうじゃん!」
「フン、気に入ったなら……また明日も作ってやっても、いいけど」
「マジかよ、うっれしいなあ! いっただきまーす! ……ゲゲッ、なんだこりゃ、お前味見したのかよ!」
「まあ、失礼ねッ! もう二度と作ってやらないんだからねッ!」ってならないと納得行かねえぞオーラが発現するはずなのね。
それと同じで、
G7(ベースがソ)と言う和音は、CまたはCm(ベースがド)に行かなきゃいけないの。つまりG7とは素直になれない女の子の精一杯の度胸で、CまたはCmとはその努力の結果なんだわ。
さて、これさえ説明してしまえば九割語ったも同然だ。
いや、マジメに。
本当は、サビのはじまりである和音E♭と途中のCmは平行調の関係にあるとかも書かなきゃいけないんだけど、面倒なうえ私も説明がうまくできないから、要するに
EbとCmはデキていると思っていてください。
まとめよう。
なぜ、ハルさんはFREE BIRDのサビのコード進行が良いと感じたのか。
このサビは、E♭と言う明るい和音から始まる。
「あー、今日は試合に勝ったし最高の気分だよ!」その下属和音、属和音であるA♭とB♭が出てくる。
これはE♭にとって基本的な進行ではあるが、同時に転調への足がかりでもある。
「ところでアイツ、体育館裏なんかに呼び出して何のつもりだぁ?」そしてついに、「転調したいCmに行こうとしたい」G7が現れる。
「きょ、今日は試合勝って良かったね。あ、あの、話があるの。ず、ずっとアンタと一緒にいて、自分の……本当の気持ちに気づいたの」G7が来てしまってはCmに行くしかない。同じく、体育館裏で女の子が勇気を振り絞って伝えたい事と言えば告白しかない。
「わ、私のこと、アンタの……か……彼女にしてくれませんか……」結論:
FREE BIRDのサビのコード進行が良いと感じられる理由。
それは、明るさから暗さへのスムースな進行が聞き手に何とも甘酸っぱい印象を与え、且つ転調したい主和音の属和音を出してくる「こう来たらこう行かなくちゃイカンだろ」と言うバリバリの王道パターンをきっちり決めてきてるから。です。
いや、この手の甘酸っぱさだと思うんだけどなあ、この場合のコード進行を表現するなら。
あとのFm7とB♭?
知らんよ。
いや、知らなくはないんだけど。
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