mixiの昨年3月25日の日記から転載
1これは遠い遠い世界の物語。
剣や魔法に彩られた、いわゆる「ファンタジー」の国でのできごと。
「虹?」
「そう、虹だ」
「虹が、この国では悪いものなの?」
“冒険者ギルド”での会話だ。一人はメガネをかけ、民族衣装を身に纏った少女、そしてもう一人は、木の机に立て置かれた一尺ほどの木偶人形。
一見彼女が独り言に興じているように見えるが、間違いなく二者は顔を見合わせ、辺りに気を遣うようにして言葉を交わしていた。
「虹ねえ、私は好きだけどな。綺麗で」
「ほお、天才魔術師、留辺尻童羅(ルベジリドウラ)も乙女らしいところがあるのだね」
「まあね。で、何で虹が?」
「……この国ではね、虹は人心を惑わし、害悪をもたらすものとされている。
もとより虹とは、反射した光が中空に投影されたものだ。その神秘性がこの国の場合、
魔鏡伝説と融合して……」
長い話なら要らない、と言って、童羅は人形の顔を掴んだ。
魔力で魂を宿した人形だから、口があるわけではない。手を出したところで口を押さえたことにならないことは、彼女も木偶人形も互いにわかっていた。
「要するに、童羅。この国じゃ虹が出ていると魔界への扉が開くと言う伝説があるんだ」
「……“虹が続く”と?」
「そう、続けて虹が出ると、魔界から魔物がやってくる」
童羅はたまらず、けらけらと笑い出した。
「ばかばかしい」
「突拍子も無い話だと思うか?」
「いやいや、そう言うんじゃ無いよ。気配があるんだ。もう魔界から遣いが来ている」
「それはおかしいな。外を見てみろ。
四六時中、虹掃除隊が出張って、出た虹出た虹全部消しているんだ」
「へえ、虹掃除、ねえ」
ギルドの扉を開け外に出ると、そこらにデッキブラシを持った少年達が待機し、空を見張っていた。
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2 (問題文)「本当だね。あんな、まだママのおっぱい吸ってるようなガキンチョまで働いてる。
どっかのカカシとは違うね。感心だわ」
「そりゃ俺のことか? 誰の所為でこんな姿になったと思ってるんだ。まあいいが。
あの野原には随分掃除人がいるな」
「そりゃ、国中津々浦々練り歩くわけにもね。およそ狙い目があるんでしょうよ」
「あの人数にかかれば、虹はひとたまりも無いな」
「あれ、割のいい仕事なの?」
「どうかな、俺の母が生前していた内職よりは、儲かるんじゃないか」
「そんな姿になる前の話ね」
「だからこんな姿にしたのはお前だろう」
「おおきな声出さないでよ。木偶人形がしゃべるだけで目立つんだから」
「まあ、幸運にもと言うか、人形に身を窶す事で生きながらえたんだからな。
嫌なわけじゃない」
「あ、見て、笹の葉。たなばたかな」
「聞けよ。今お前に感謝しようとした感動の場面なんだから」
「へえ、何て?」
「……いや、今までありがとうとか、そう言うの」
「はいはい、これからもよろしくね。
……少なくとも今回は、あんたの知識が役立ったんだから」
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3 「ん?」
「だから、虹の話さ。虹は害悪をもたらすなんて、真っ赤な嘘。
本当のことを隠すための、デマなんだよね」
「おいそりゃ、どういうことだ?」
「本当は虹が出ると、バレちゃうのよ」
「バレる?」
「既に魔界の遣いは人間に化けて、この国のどこかに潜んでいる。
それも意外なところに……やっぱり虹は、神聖なものだったのよ」
「つまり?」
「続けて“虹が出た”なら、魔界の遣いの正体が解る……って事」
【問題】
魔界の遣いとは一体誰だ? PR