実家の向かいに、男の子が住んでいる。いま高校生だと言うから、少なくとも私より7歳は下と言う事になる。
この男の子、幼い頃から引越しもせず向かいにいたから、結構思い出がある。ヒステリックな母ちゃんのいる家だったが、兄弟と近くの子供を集めて屋外で鬼ごっこをするくらいの、活発な少年だった。また、その家の2つ隣には、同じ年の女の子が住んでおり、その子も混じってよく遊んでいたようだ。
ただ、小学生の時分ならそれで良かったが、中学生となると少し事情は変わる。
大抵思春期になると、男子より女子の方が成長が早いもので、変声期を過ぎてなお「うんこ、うんこ!」とガキらしく騒ぐ男の子を余所目に、女の子は何だか大人びて、あまり一緒に遊ぶことも無くなっていたようだ。
さて、そんな二人だが、高校生になると――最近、道端で話し込んでる事が多いのだと言う。
男子も高校生になれば、さすがに異性の目は気にする。今更うんこでも無いし、ちょっとは身だしなみも気を遣う。
ようやく成長を感じさせた男の子だったから、例の女の子もプライベートで会話ができる程度に打ち解けたのだが、どうも、距離があるらしい。
2人共、互いの家の玄関先から、立ち話していると言うのだ。
走れば5秒もかからない微妙な距離。なのに近づかない2人。
それでも立ち話は、1時間も続いている。
男子高校生にとってさ、小学校の頃からずっと町内の顔なじみで、よく一緒に遊んだけれど成長過程の中で少し食い違って、それでもまだ関わりを持てる関係。つまり「幼馴染」なんだが、通常、これって、異性として見るじゃん。
けれど、一度は接点を失っていたから、うまく近づけない。ずっと遊びに誘っている仲だから、照れがあってイマイチ弱みを見せられない。
あわよくば向こうから近寄ってきてくれねえかな、って魂胆だ。
女の子も、うまーく近づけない。「あんなガキ、別にどうとも思っていないんだし」と思っても普段から距離を保ってコミュニケーションを取っているから、今更踏み出せない。
たぶん、そうだと思うわけよ。
あー、恥じらいのある青春は良いよねえ。
どうなんだろ、くっつきゃ良いのに。
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